構築記事を開くと、いきなりこういう文章が出てくる。
最速オオニューラ189を意識して、ガブリアスは22ポイントで143抜き。余りは耐久へ。
シーズンM-5のランクバトルを回していても、この一文が読めないと構築の意図がまったく掴めない。ここに出てくる189も22も143も、すべて種族値から計算で出せる数字だ。順を追って出し方を説明する。
速いほうが勝つ、ではなく「速いほうだけが殴れる」
素早さが高いほうが先に技を出す。ルールとしてはそれだけだが、対戦での意味はもっと極端になる。
先制して相手を倒しきってしまえば、相手はそのターン何もできない。攻撃も交代も回復もできずに退場する。素早さで勝っているというのは、有利に戦えるということではなく、相手の行動そのものを消せるということだ。
だから素早さ169と170の差は、ほかの能力の1とはまったく重みが違う。攻撃力が1低ければダメージが少し減るだけだが、素早さが1低ければ先手と後手が入れ替わる。中間がない。この不連続さが、素早さを最初に決める理由になっている。
「種族値」と「実数値」の使い分け
つまずくのはたいていここだ。
種族値は、そのポケモンの種類に固定された数字を指す。ガブリアスの素早さ種族値は102で、世界中のどのガブリアスも102。変えようがない。対して実数値は、育てた結果として実際にバトルで比べられる数字を指す。同じガブリアスでも122だったり169だったりする。
構築記事に出てくる「最速169」「143抜き」はすべて実数値のほうだ。種族値102と種族値78を比べても意味がない。種族値78のイダイトウが、種族値102のガブリアスを実数値で上回ることは普通に起きる。育て方でそれだけ動く。
種族値から実数値を出す
実数値を動かす要素は2つある。
ひとつが能力ポイント。かつて努力値と呼ばれていたもので、チャンピオンズでは名称も単位も変わった。1つの能力に最大32、6つの能力あわせて66まで使える。もうひとつが性格補正で、性格によってある能力が1.1倍、別の能力が0.9倍になる。どちらでもない能力は1.0倍のままだ。
個体値という3つめの要素はチャンピオンズで廃止され、全ポケモンが31で固定されている(個体値廃止で何が変わったか)。厳選をしていないポケモンと、やり込んだ人のポケモンで、素の性能に差がない。
計算式はこうなる。
実数値 = { (種族値×2 + 31 + 能力ポイント×2) × 50 ÷ 100 + 5 } × 性格補正
長く見えるが、やることは足し算と割り算だけだ。最速ガブリアス(能力ポイント32・性格1.1倍)を実際に出してみる。
手順1.種族値を2倍する。 ガブリアスの素早さ種族値は102なので、102 × 2 = 204。
手順2.個体値の31を足す。 全ポケモン共通で31。204 + 31 = 235。
手順3.能力ポイントの2倍を足す。 上限まで振るので32、その2倍で64。235 + 64 = 299。
手順4.半分にする。 Lv.50なので × 50 ÷ 100、つまり2で割る。299 ÷ 2 = 149.5。小数は切り捨てて 149。
手順5.5を足す。 149 + 5 = 154。ここまでが性格補正なしの数字になる。
手順6.性格補正をかける。 素早さが上がる性格なので1.1倍。154 × 1.1 = 169.4 → 切り捨てて 169。
これが「最速ガブリアス169」の中身だ。HPだけは式が違い、最後に性格補正をかけず +60 して終わる(HPに性格補正は存在しない)。
能力ポイントは1つで実数値が1上がる
チャンピオンズで大きく変わったのがここだ。
SVまでの努力値は、Lv.50だと8振ってようやく実数値が1上がるという分かりにくい刻みだった。4振っても8振っても結果が同じ、ということが起きる。チャンピオンズの能力ポイントは1つ振れば実数値が1上がる。ガブリアスの素早さなら、0で122、1で123、2で124と素直に伸びていく。
ただし性格補正がかかる能力では、切り捨ての位置がずれるため1ポイントで2上がるタイミングや、逆に1上げるのに2ポイント要るタイミングが出てくる。上昇補正を使うなら、最後に一度実数値を確かめたほうがいい。
なお6つの能力あわせて66までなので、2つの能力を32ずつ上限まで振ると64、余りは2になる。これが「32/32/2」という定番の配分だ。捕まえた時点で、すでにこの形で配られている。
環境上位の素早さを並べてみる
よく見る5体を、実数値の高い順に並べるとこうなる。自分のポケモンがどこに割り込むのかを見るための表だ。
並べてみると、育て方の差が種族値の差を平気で飛び越えているのがわかる。無振りのマスカーニャ143は、最速のイダイトウ143と同速でしかない。種族値では45も離れているのにだ。同速は先攻後攻がランダムで決まるため、勝率5割の運任せになる。
一方で、種族値の差が絶対に埋まらない場面もある。マスカーニャの最速192とドドゲザンの最速112では、どちらも上限まで振っている以上、80の差はどう頑張っても縮まらない。素早さで戦うポケモンとそうでないポケモンは、この時点で分かれている。
抜きたい相手を1だけ上回る
最速にすればいちばん速い。ただし必要以上の速さは1ポイントも仕事をしない。抜きたい相手を抜けているなら、余ったポイントは耐久や火力に回したほうが得になる。
冒頭に出した「ガブリアスは22ポイントで143抜き」を確かめてみる。抜きたいのは最速イダイトウの143だ。
上の手順に22を入れると、204 + 31 + 44 = 279 → 279 ÷ 2 = 139.5 → 139 → 139 + 5 = 144。143をちょうど1上回った。21ポイントだと143で同速になってしまうので、22が下限になる。
最速の169まで振る必要はなかったことになる。浮いた10ポイントを耐久に回せるうえ、性格補正も攻撃を上げるほうに使える。これが構築記事でよく見る調整の中身で、やっていることは引き算だけだ。
引き際も同じくらい大事になる。同じガブリアスで、準速オオニューラの172を抜こうとすると必要な実数値は173。無補正では上限32でも154にしかならず、性格補正を使っても169で届かない。この相手は素早さで抜けないとわかった時点で追うのをやめ、ポイントを別に回すのが正解になる。届かない相手を追いかけるのがいちばんの無駄になる。
相手がスカーフを持っていたら関係ない
ここまでの計算には例外がある。こだわりスカーフだ。
持たせると素早さが大きく上がる代わりに、最初に選んだ技しか出せなくなる。厄介なのは、相手が持っているかどうかが戦う前にわからないことだ。
つまり相手の素早さには常に「表の数字」と「スカーフを持っていた場合の数字」の2つがあり、どちらなのかは技を出すまで確定しない。どれだけ精密に1だけ上を取っても、相手がスカーフなら関係なく抜かれる。
実戦では「何ポイント上か」ではなく「スカーフ圏内かどうか」で考えることになる。慣れないうちは、想定より速い相手が出てきたらスカーフを疑う、くらいで十分だ。
遅さを追う側にも下限ができた
素早さには逆方向の戦術もある。トリックルームを使うと5ターンのあいだ遅いほうが先に動くようになる。
素早さ種族値50のドドゲザンのような鈍足は本来この戦術と噛み合うが、個体値の廃止で事情が変わった。かつては素早さの個体値を0にして限界まで遅い個体を作れた。いまは全員が31で固定なので、それ以上遅くできない。
ドドゲザンで性格を下降補正にして能力ポイントを0にしても、実数値は63より下がらない。トリックルーム下では63より遅い相手にしか先手を取れないという下限が、全プレイヤーに一律でかかっていることになる。鈍足同士では差が縮まり、張った側が思ったほど有利にならない場面が出てくる。
決める順番
やることを整理すると4つになる。
そのポケモンを素早さで戦わせるかどうかをまず決める。遅くていいなら能力ポイントは0でよく、無理に振るとほかが痩せるだけだ。素早さで戦うなら、抜きたい相手を1体決めて、その実数値を調べる。そこを1だけ上回るところまで振り、余りを耐久や火力に回す。届かないと分かったら潔く諦める。
素早さの調整に勘や才能は要らない。種族値を2倍して、31を足して、ポイントの2倍を足して、半分にして、5を足すだけだ。個体値の廃止と能力ポイントへの変更で、この計算は誰がやっても同じ答えになり、しかも1ポイント=1という素直な単位になった。
まずは自分がよく使うポケモン1体で、無振り・32振り・最速の3つを出してみてほしい。手元に数字があるだけで、構築記事の見え方が変わる。